各種資料:トランスの取扱説明
本項をよく読んで内容を理解した上で、製品を正しくお使いください。
1. 安全にお使いになるために
本書では、誤った取り扱いによる事故を防ぐために、次のようなマークをつけて注意事項を表記しております。
警告 | 指示を無視して誤った取り扱いをすると、死亡または重傷の可能性がある内容を示します。 |
注意 | 指示を無視して誤った取り扱いをすると、傷害または物的損害の可能性がある内容を示します。 |
お願い | 製品を安全・快適に使うために理解していただきたい内容を示します。 |
このマークは禁止の行為である内容を示します。
このマークは必ず守っていただきたい内容を示します。
警告(感電注意) |
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単品のままで通電しないでください。感電の原因になります。 通電中は、絶対にトランスや回路に触れないでください。感電の原因になります。 |
注意(発火注意) |
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定格容量を超える負荷を加えないでください。発煙、焼損の原因になります。 定格電圧を超える電圧を印加しないでください。発煙、焼損の原因になります。 1次側と2次側を逆に接続しないでください。発煙、焼損の原因になります。 電極をショートさせないでください。発煙、焼損の原因になります。 通電中に、端子に異物を触れさせないでください。ショートして発煙、焼損の原因になります。 運搬時や配線時に過度な力を加えたり、落としたり、ぶつけたりしないでください。もし落としたりした場合には、絶対に使用しないでください。発煙、焼損の原因になります。 万一の事故を防ぐために、保護回路(タイムラグヒューズ、サーキットプロテクタ、サーキットブレーカーなど)を接続してご使用ください。 |
お願い |
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ラグ端子に外力を加えないでください。口出し線が断線することがあります。加工が必要な場合は、特注品をご検討ください。 太すぎる線材でラグ端子に配線しないでください。過度な力が加わるため、口出し線が断線することがあります。 本機は、以下のような場所に取り付けてください。
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2. トランスの基礎知識
トランスは、電磁誘導作用を利用して1次側の交流電力から、電圧・電流を変成して2次側に供給する装置です。
V1:1次電圧 V2:2次電圧 I1:1次電流 I2:2次電流 f:周波数
トランスには、相数、使用周波数、1次と2次の結合方式、1次電圧、2次電圧、定格容量、外観などで各種のタイプがあります。
使用条件に合ったタイプをご使用ください。
設計する
- ①印加される電圧が定格電圧を超えないように回路設計をします。
また、1次側に保護回路(ヒューズ、サーキットプロテクタ、サーキットブレーカーなど)をつなぐ回路設計をします。保護回路については、後述の「3. 保護回路の必要性」を参照してください。 - ②トランスをケース・盤などに収納できるようにハード設計をします。
- ③トランスを組み込んだ製品として第三者に使用させる場合は、感電や高温の可能性のある箇所に警告表示をして注意を促します。
設置/配線する
- ①以下の条件を満たす場所に設置します。
- 周囲が使用温度範囲内である(機種によって異なります)。
- 機械的振動がない。
- 取付面が固く安定している。
- 水滴、ほこり、腐食性ガスがかからない。
- ②電源側にトランスの1次側を接続し、負荷側を2次側に接続します。
使用する
- ①通電前に以下の点を確認します。
- 誤配線がないこと。
- ネジの締め付けが適正トルクであること(ネジ端子の場合)。
- ハンダ付けが正しく行われていること(ハンダ付け端子の場合)。
- 端子部に過度の力が加わっていないこと。
- 端子が変形していないこと。
- ②通電中は以下の点を守ってください。
- 定格容量を超える負荷を加えない。
- 定格電圧を超える電圧を印加しない。
- カバー、端子などに触れない。
- トランスの本体や端子に過度な力を加えない。
- 落としたり、ぶつけたりしない。
- 電極を露出したり、ショートさせたりしない。
トランスは、信頼性が高く、寿命の長い機器です。しかし、長時間使用すると、温度・湿度・酸素などの影響で、巻線の被覆やコイル間スペーサなどの絶縁物が劣化します。絶縁物は劣化が進行すると、異常電圧や外部短絡の際の電気的・機械的ストレスを受けて破壊される危険が増します。また、トランスの寿命は絶縁物が受ける温度に影響を受けます。このため、寸法や絶縁種別が同じトランスでも、温度の高いところで使用する機器の場合は、定格容量が小さくなりますので注意が必要です。
絶縁種別 | A種 | E種 | B種 | F種 | H種 | |
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絶縁物の使用温度上限値 | 105℃ | 120℃ | 130℃ | 155℃ | 180℃ | |
トランスの許容最高温度 | 100℃ | 115℃ | 120℃ | 140℃ | 160℃ | |
トランスの温度上昇限度 | *1 | 60℃ | 75℃ | 80℃ | 100℃ | 120℃ |
*2 | 30℃ | 45℃ | 50℃ | 70℃ | 90℃ |
*1:周囲温度40℃(標準環境)の場合
*2:周囲温度70℃の場合
3. 保護回路の必要性
トランス事故の原因として、トランス自体の異常、負荷の異常、電源電圧の異常な上昇、回路の誤配線などが考えられます。
トランスに事故が発生すると、異臭の発生、発煙、火災、感電などの事故に直結しますので、保護対策を行っておく必要があります。具体的には1次側に短絡保護、2次側に過負荷保護及び短絡保護の為、過電流保護機器を設けて下さい。
1次側: | トランスの無負荷励磁突入電流で不要トリップ(又は溶断)を発生させず、かつ短絡電流を遮断する性能を要求されます。サーキットプロテクター及びサーキットブレーカーの場合、トランス1次側電流の約2~3倍の定格電流を有するトランス保護用ブレーカーを選定して下さい。ヒューズの場合は同じくトランス1次定格電流の約2~3倍の定格電流を有するタイムラグ型ヒューズを選定して下さい。 |
2次側: | トランスの2次定格電流以下の過電流保護機器を選定して下さい。 |
何れの場合も、配線用電線と過電流保護機器との保護協調に留意して下さい。
[注意]トランスを組込む装置が海外向け仕様の場合は、保護の方法も装置に適用される仕向け地の法律、安全規格等に従って下さい。
4. 使用状態について
弊社の標準品(当カタログ記載製品、並びに一般特注品)は、JECに定める常規使用状態で使用する事を想定して設計・製作致しております。特殊使用状態では使用できません、別途お打合わせの上、特注品にて対応させて戴きます。
[常規使用状態](JEC-2200 より抜粋)
- ①標高 設置場所の標高は1000m をこえないものとする。
- ②周囲の冷却媒体の温度 冷却媒体が空気の場合は、その温度は次の値をこえないものとする。
最高:40℃ 日間平均:35℃ 年間平均:20℃
(JIS では相対湿度を45~85%と定め、氷結・結露しないこととしている) - ③回路電圧波計 変圧器の接続される回路の電圧波形は、ほぼ正弦波であるものとする。
[特殊使用状態]
- ①標高 設置場所の標高が1000m をこえる場合。
- ②周囲の冷却媒体の温度が常規使用状態の限度をこえる場合。
- ③使用場所の状況が次の場合
(a)潮風、塵埃などによる汚損のはなはだしい場所で使用する場合。
(b)水蒸気中又は湿気・水分の多い場所で使用する場合。
(c)爆発性・可燃性・腐食性その他有害ガスのある場所で使用する場合。
(d)氷・雪の多い場所で使用する場合。
(e)異常な振動又は衝撃をうける場所で使用する場合。
5. こんなときは
トラブルが生じた場合は、速やかに電力供給を中止してください。
以下の表でトラブルに該当するチェック箇所を確認し、処置を行ってください。
トラブル | チェック箇所 | 処置 |
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異臭または発煙 | 配線・負荷容量・負荷の種類・電源電圧・水滴の付着など状況全般 | 該当トランスの使用を中止し、詳しい状況を弊社までお知らせください。 トランス単体の調査だけでは原因を特定できません。 |
1次側のサーキットプロテクター又はサーキットブレーカーが作動 | 配線 | 誤配線の場合は、正しい配線に修正してください。 |
負荷の容量 | 負荷を定格容量以内に抑えてください。 | |
電源電圧 | 電源電圧が高すぎる場合は、次の処置を行ってください。 ・タップがあるときは、電源電圧に適合したタップに切り換えてください。 ・タップがないときは、電源電圧に適合したトランスと取り替えてください。 |
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サーキットプロテクター又はサーキットブレーカー | トランス保護用でない場合はトランス保護用と取り替えてください。 | |
1次側のヒューズが溶断 | 配線 | 誤配線の場合は、正しい配線に修正してください。 |
負荷の容量 | 負荷を定格容量以内に抑えてください。 | |
電源電圧 | 電源電圧が高すぎる場合は、次の処置を行ってください。 ・タップがあるときは、電源電圧に適合したタップに切り換えてください。 ・タップがないときは、電源電圧に適合したトランスと取り替えてください。 |
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ヒューズの種類 | 遅延型でない場合は、遅延型と取り替えてください。 |
製品の異常や、付属品の不足などがある場合は、弊社またはお買い上げ販売店までご連絡ください。なお、お問い合わせの際には、型式と製造番号をお知らせください。
特注品・カタログのご依頼についても、お問い合わせください。
6. 用途の制限
当社製品は、通常の産業用等の一般的用途に使用されることを意図して設計・製造されております。「特定高信頼用途」即ち、極めて高度な安全性が要求され、仮に当該安全性が確保されない場合、社会的に重大な影響を与えかつ直接生命・身体に対する重大な危険性を伴う用途(原子力制御、航空宇宙飛行制御、航空交通管制、輸送機器制御、医療機器、兵器システム制御、各種安全装置など)に使用されることを意図して設計・製造されたものではありませんので、「特定高信頼用途」にはご使用にならないで下さい。
当社は、これらの用途に当該製品が使用されたことにより発生した損害等については、責任を負いません。お客様の装置が「特定高信頼用途」に該当する可能性がある場合は、事前に当社担当営業までご相談下さい。
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